いよいよ2015年の株式市場が始まった。
金融政策が「ばくち」をうっている以上、今年の相場は「ばくち」になる。
しかし、正直、各誌の評論家の皆さんの予想には驚かされる。何かにとりつかれたように「安心しきっている」ではないか。
とても今の経済状況はそんなものではないだろう。
今回は年初でもあり、今年一年の株と為替を占ってみたい。
2015年の基本的な読み方
大多数の専門家は、2015年、株高・円安を予想する。
価格では日経平均株価で20000円〜23000円
為替は、125円〜130円
これらの予想は、次のような前提に基づいている。
★異次元緩和が継続する
★米国の緩和縮小が、今年秋口を目指す
★GPIFと日銀が株式やETF、国債を買う
★企業業績は好調を維持
特に、「政策に売りなし」と言われる通り、日銀が断固たる決意で物価上昇率2%にこだわり、安倍政権の生命線は株価にある、となると、異次元緩和の継続と、GPIF改革を始めとする株価対策は万全だ、と思える。
さらに、米国の緩和縮小が間違いなさそうなので、日本との金利差拡大に基づくドル高も、疑いようがない・・・。
そして、円安による企業業績の更なる拡大もまた然り。
しかし、大きな問題が一つある。
それは、日銀の追加緩和政策修正についての可能性だ。
誰もが日銀の緩和政策が長く続くと信じ切っているが、日銀総裁は、「嘘つきライセンスを持つ男」だということを、忘れているようだ。
追加緩和によって、日銀は、国債の年間買い入れ枠を50兆円から80兆円に引き上げ、2015年末のマネタリーベースは350兆円を突破する。
この数値の異常性は、専門家でないとわかりづらいが、これは、いよいよ「あ、ジョーシキとかどーでもいーんだ」と思わせる数値だ。
黒田総裁が宇宙人でもない限り、これを長く続けるとどういうことになるか、わからないはずはない。
いずれも、物価上昇率2%を達成するまで、という話だが、そもそも政府日銀は、株高・資産インフレの為に、このような背水の陣を敷いているわけではない。
逆に実体経済が良くならない中、資産インフレが起こることは、いずれ政権を危うくするだろう。
不景気下の資産インフレは、所得が伸びない中での地価上昇を招き、バブル時のような「持ち家は夢のまた夢」という状況をつくる。さらに、株や不動産価格のボラティリティが上がることで、担保価値のリスクは大きくなるだろう。
つまり、原油安や、その他の要因でインフレ率2%の達成が完璧に無理だと判断した時、あるいは異次元緩和の弊害が出てきたとき、日銀は、政策を変更する、という可能性を常に考えておくべきだ、ということだ。
タイミングは米国が明白に緩和終了の発表を行ったとき、あるいは原油価格の下落が長期化する見通しになったとき、だろう。
年間を通しての予想は6月〜8月がポイント
今年の展開は、以下のような想定をしたい。
1月〜2月は、中国経済への懸念と米国債務上限問題も絡み、円は膠着状態になるだろう。119円を中心に117円〜121円程度のレンジとなると思われる。日経平均株価はスタートにつまずくことが予想され、1月はいきなり正念場を迎える。今、海外からくるニュースはかなり危ういものが多い。中国の不動産会社の破綻懸念、中国政府の政治的な動き、原油価格を巡る足並みの乱れ、などだ。3月にかけて、どこまで戻すか、という勝負になるが、目処としては18500円程度ではないだろうか。
3月〜5月にかけては、相場は強気に転じると見る。
米国の利上げ見通しを核に、円安に振れるのはこの時期だろう。125円程度までの円安は想定しておく必要がある。また、株式市場は、6月の国会会期末に向け、新成長戦略が発表され、投資テーマが絞り込まれることも考えられる。
日経平均株価の目処は、19500円だろう。うまくいけば20000円が狙える。
問題は6月から8月の3か月間だ。
ここ数年、夏場に相場は下落している。現在の大多数の予想が覆るとすれば、この時期だ。
この期間のポイントは、原油価格だろう。原油価格の下落が続いた(あるいはこの時期に再度下落が始まった)場合、NY市場を始め、上海総合指数も下落することが考えられる。このとき、東京市場は、どうなるだろうか。
これまで通り、NYに連動するなら、この時期に日経平均はやはり下落するだろう。しかし、東京市場の独自性(原油安が業績にプラスになる)に注目するならば、逆に海外からの資金が東京市場に来ても良いはずだ。
1991年の数値を⒈としてNYダウ、日経平均株価、上海総合指数、WTIのそれぞれを指数化
上記のグラフを見ると、米中株式市場は原油高と同じく、あるいはそれ以上に上昇してきたが、東京市場だけが置いて行かれている。
逆に原油安が起きたとき、NY市場と東京市場の差が縮小する可能性はある。
いずれにしても、6月〜8月の日経平均株価は、18000円〜20000円まで、あらゆる展開が考えられる。
この時期の株価が20000円程度をキープするようなら、異次元緩和に修正がある可能性がある。
異次元緩和に修正が加えられる場合、9月から12月にかけて、株式市場は、一定の調整を余儀なくされるだろう。
株価は20500円程度を付けたあと、19000円程度まで調整する可能性がある。
しかし、異次元緩和の修正は、米国金融政策の引き締めと必ずセットになると思われるので、為替は125円程度をキープするだろう。
6月〜8月の期間で株価が18000円程度まで下落した場合、異次元緩和は継続される。このことは、年末までに、一旦株価を21000円程度まで押し上げる可能性がある。しかし、このパターンは、その後の経済運営にとって、ある意味自分自身を追い込むような展開となるかもしれない。
6月〜8月のもう一つのリスクは中国だ。中国経済の異変は年初にすでに現れるだろうが、その情報がある程度経済的に織り込まれるのはこの時期までずれるだろう。それは、中国が戦勝70周年に合わせ、政治的な動きとセットでこのことを対外的に知らせる可能性があるからだ。
ここで中国経済が大きく変調を来たす場合、株式市場は17000円程度まで下落する可能性がある。そうなると、いかに異次元緩和を継続し、GPIFを動員しても、年末までの上昇はせいぜい19000円だろう。
市場のテーマ
官製相場であるだけに、銘柄選択にどの程度の意味があるか、疑わしい部分もある。銘柄をいちいち考えるよりも、日経平均やJPX400を買ったほうが、効率が良いからだ。
しかし、展開によっては中小型株の出番が多くなる可能性もある。
そこで、以下の3つを挙げておく。
★「防衛・防災」
★サイバーセキュリティ
★SIMロック解除関連
集団的自衛権は、防衛予算に大きな影響を与える。また、海外での日本の軍事産業の活躍もまた、今後の成長分野としての可能性がある。
日本が海外と比べ、抑えられてきた分野は、「軍事」と「カジノ」であり、この2つの分野を成長分野と位置づけることは間違っていないだろう。
また、株式市場ではあまり言われないが、昨年の各火山の噴火に見られるように、地質学的リスクが高まっている、ということは、学会などで良く聞かれる。今年は、そういった懸念に対する対策が講じられる年にもなるだろう。
サイバーセキュリティに関しては、今年年初に、政府内に「サイバーセキュリティ戦略本部」が置かれ、本格始動となる。北朝鮮によるとされるサイバー攻撃なども大きな話題となり、今年はさらにこのテーマに注目が集まると思われる。
通信分野では、MVNOやSIMロック解除関連が、改めて精査される。今年の5月1日が、SIMロック解除義務化の日程だが、それまでに様々なビジネスモデルが発表されるだろう。
SIMとMVNOはほぼ、登場偉業が重なると思われる。
以上、簡単に今年を占ってみたが、今年の正念場は、1月2月と6月〜8月だろう。ここを上手に乗り越えることが、トータルでの勝につながると見ている。
株式アドヴァイザー 堀