3月決算企業の決算発表のピークが過ぎた。
今のところ、今回の決算発表は、投資家にとっては決して良いものではない。この3月までの数値はともかく、今期の予想が、皆、消極的なのだ。実績が良い企業にこそ、そういった傾向が強いように感じる。
そんな傾向が強いので、今回の決算発表では、好決算の銘柄の売買に注意が必要になる傾向がある。
例えば、決算発表に向けて上がってきた好業績銘柄は、発表と同時に、いわゆる「好材料の出尽くし」となり、株価が下がることが多い。そこで、好決算の銘柄の空売りは、非常にやりやすい時期が、この決算発表時期だ。
逆に、決算発表まで下落してきた銘柄は、発表の後に反発に転じやすい。
しかし、今回の相場展開の中では、決算発表に向けて明確に上昇してくる銘柄が少ない。そうなると、好業績銘柄を空売りしてやろう、と待ち構えようにも、上がってきていないと空売りをしにくいので、どうしても待ってしまう。
逆に、好業績なのに上がっていないことを発見すると、買いたくなってしまうのだ。
しかし、それは見送った方が良い。
代表的な例で、5月1日に決算発表を行った、ヤフー、ベネッセ、島精機を見てみよう。
ヤフー(4689)は、決算発表前の5月1日終値は490円。
決算の内容自体は、ほぼ予想と同じで、売上、営業利益、税前利益、当期利益、すべてが前期を微妙に上回り、増収増益を確保した。
株価はこれを受け、発表翌日には20円高の510円で始まったが、終値は結局492円。翌日には488円となり、決算発表前よりも株価水準は下がってしまった。
誰がどう見ても悪いことがわかっていたベネッセは、発表前の株価は3710円。
決算は、昨年10月に下方修正した数値より少し良かったが、今期予想が、四季報では330億円の営業利益に対して、会社予想は135億円、としてきたのだ。この発表後には、売り気配で推移し、寄り付いたのは3315円。そして、終値では3030円まで下がった。
反発したのは翌日。寄付きは3075円、終値は3115円だ。
会社予想通りで営業利益が倍増した島精機(6222)は、発表前の株価は2132円。発表翌日は、2148円とわずかに高く始まったが、結局その日の終値は2072円、翌日は2069円で終わった。
この3つの銘柄の動きや、他から言えることは、以下のことだ。
1.好業績銘柄が、発表前に上がっていなかったとしても、買うのは控えた方が良い。逆に、上がってくるようなら、空売りの対象にする。
2.業績の悪い企業の株価が決算発表後に下落した場合、反発のタイミングを慎重に狙うべき。その日の売り気配にぶつけて買うのは控えた方が良さそう。
3.株主還元策(増配や自社株買い)を発表している銘柄は、短期的に買い対象になる
■自信がある企業は、場中に発表してくるケースが
普通、決算発表に限らず、企業の情報開示は、3時の相場が引けた後に行われるのが普通だ。できるだけ多くの人に同じタイミングで情報を与えるためだ。
しかし、5月7日の双日HDは12時半、8日は、帝人が11時、三菱重工、三菱商事は13時半に発表をした。
こういった行動には、二つの要因が考えられる。一つは、すでに新聞社に情報を取られていて、記事として出てしまったか、出そうな場合。もう一つは、株価をスムースに動かしたい場合だ。
場中に良いニュースが流れると、株価は瞬く間に上がる。そして、ニュースの市場への反応に時間差が生じるので、株価の上昇が長持ちしやすいのだ。
逆に夕方に発表をすると、多くの人に一度に伝わる分、翌日の朝には上がりやすいが、チャート上で「窓」を開けるので、その後が下がりやすくなる。また、気配値で上昇すると、その間に、売り注文も、空売りを含め、大量に集まってくる。
こういった株価の動きに通じている企業は、時々、このように日中に良い発表をしてくる。
このような日中の発表に、敏感に反応したい投資家は多いだろう。しかし、止めておいた方が無難だ。どう頑張っても機関投資家の出足にはかなわないし、そのニュースが本当に良いニュースなのか、株価にすでに織り込んでいるような数字ではないのか、こういった判断を、急いですると、間違うことが非常に多くなる。
特に今月は、焦る月ではない。
JST特別アドバイザー 堀