◆ いま、個別株物色では、日経平均に勝てないのか
古くから、金融緩和下の資金余剰で上昇する相場を「金融相場」、企業業績や景気が好調の中で上昇する相場を「業績相場」という。
現在の状況は「金融相場」の状態であると思われるが、これがいつ「業績相場」に転換するのか、に注目すべき局面だ。
なぜなら、金融相場が業績相場へ移行するタイミングで、市場は一時的に下落し、物色する銘柄が変わる、というのが、一般的な展開だからだ。
「いや、いまでも業績が良いものが選別して上昇しているではないか」
という意見もある。
「だから、業績相場ではないか」と。
しかし、実際に市場に参加してみると、今がいかに指数先物優位の展開になっているかがわかるはずだ。個別のテーマや業績に左右されるのは一時的な動きであり、パフォーマンスは個別物色ではなかなか上がらない。いわゆるパッシブ運用(TOPIXや日経平均を買ってそのままにする)に勝てる環境ではないのだ。
基本的に、日経平均先物、現物のバスケット売買が、パフォーマンスの優位に立ちやすい。
また、それが金融相場の一つの特徴でもある。
以前のコラムで指摘した通り、前回、中国の金融緩和以来、世界の市場は金融相場の渦中に飛び込んだのだ。
さて、ではいつ、金融相場の終焉が来て、市場は調整し、いつ業績相場がはじまるのだろうか。
◆ 金融相場はいつ、業績相場に転換するか
相場の質が転換するには、「金融緩和が終わり、景気回復が企業業績に寄与している」という市場参加者の合意が必要となる。
ではまず、いつ金融緩和は「材料として」終わるのか。
まず、基本的な日程を考えてみよう。現在言われているのは、12月3日のECB政策理事会で、欧州での金融緩和策が発表され、12月15日、16日のFOMCで米国の利上げが決まる、という説だ。さらにそれに続く17日、18日は、日銀会合だ。
この12月3日から12月18日まで、市場は各国の中央銀行の動向に注目する。おそらく日銀も、12月3日以降の為替相場の状況を注視するだろう。あるいはそれが、もっとも日銀の政策に影響を与えるかもしれない。
誤解を恐れず、政策だけを予測するなら、欧州は緩和に動き米国は利上げに動く可能性が高い。そして日銀は動かないだろう。
この前提に立った場合、以下の様な展開が考えられる。
12月3日から15日
欧州緩和、米国利上げ期待を受けて、ドルが上昇。連れ安で円も下落し、日本株価は上昇。
12月16日
米国利上げを受け、材料出尽くしで、ドルは下落、円、ユーロは上昇
12月18日以降
日銀の緩和見送りで、円は上昇、株価は下落
つまり、このシナリオなら、日本株の金融相場は12月16日の米国利上げで、終焉を迎える。
そして、来年年初から、業績相場がスタートする、という素早い転換が予想される。
しかしもし、日銀が何らかの緩和策を捻出した場合は、それによって金融相場は継続される。この場合、予測は困難だが、為替はもう一段落円安に向かい、125円を超える可能性がある。それに伴い、東京市場では来年3月頃まで、金融相場が続く可能性もある。
来年年初から業績相場が始まる、という根拠は、中国経済にある。現在、大陸から伝わるニュースには楽観的なものが多い。
中国の成長率は、早晩6%台に落ちるだろうが、その後の成長率鈍化は、ゆっくりとしたペースになるだろう、という。少なくとも、一説にあるような「クラッシュ説」「もともと成長率は3%程度」という説は、かなり後退した。
今年、業績相場に移行することができなかった最大の原因は、中国経済への不安感だ。それがもし払しょくされれば、それだけで業績相場は始まる。春慶節の前に、中国当局が、なんらかの楽観的見通しを出す可能性はあるのではないか。
◆ 業績相場での注目銘柄
業績相場になれば、当然、業績が期待できる中小型株の中から出世株が出やすくなる。今回は、以下の2銘柄を紹介しよう。
いまや、ネットで何かをする、という消費行動は当たり前になり過ぎている。多数参加型オンラインゲームや、SNSの新たなサービス、LINEの上場動向などに、焦点がまだ当たっているのも事実だ。しかし、そのことが、逆に、「リアル」なコミュニケーションの価値を上げているのだ。
そういう意味で、リアルなコミュニケーション支援を事業とする2社を紹介しておこう。
IBJ(東証1部6071)
婚活サービス事業。婚活サイトから、結婚相談所の運営まで、婚活に関するあらゆる局面を総合的に事業としている唯一の会社。他業者がネットのみ、街コンのみ、と特化している中で、社員スキル(プロポーズアドバイザーのような)まで徹底して、あらゆるシーンの婚活を応援する企業。
今後、結婚前後のライフデザインを担う事業の買収などが期待される。
セレスポ(東証JQS9625)
イベントの制作・運営会社。東京五輪関連銘柄として面白い存在。第三回中期経営計画を策定、東京五輪に向け、他社と徹底した差別化を図っている。
短期的に急騰した場面もある両銘柄なので、タイミングをよく見て、検討してみてはいかがだろうか。
JST特別アドバイザー 堀