■ 怪しげな?中国政府・ファンドの動き
世界経済における、本年最大の懸念ポイントである中国経済の減速が、ここへきてやはり、表面に出てきた。
その「副産物」が、原油、金価格の下落だ。
原油価格の代表的な指標の一つ、WTIは、先週48ドル台へ下落してきた。
簡単に値動きを説明すると、昨年夏ごろまで、WTIの標準的な価格は100ドル程度であったのが、8月から急落を始め、今年1月には45ドルを瞬間的に割れる水準まで下落。その後、一時50ドル台へ持ち直したが、3月には再度45ドルを割れた。しかし、その後60ドル程度まで再度上昇し、テクニカル的にダブルボトムを形成し、下落相場は一息ついたかのように見えた。
しかし、今年7月に入って中国経済に減速感が出ると、またしてもWTIは下落傾向を強め、先週、中国の景気指標が弱い数値を出すと同時に、価格は一気に48ドル台に下落した。
原油は、もともと米国のシェールガスの生産本格化や中東の価格政策によって、世界的に供給が過剰になっていた。しかし、それを飲み込んでいたのが、強烈な中国の経済発展だった。
この中国経済の成長に陰りが見えれば、政策的な減産がない限り、原油価格は下がらざるを得ない。
そこへ、投機筋の売りが価格変動幅を増幅させ、原油価格はあっという間に、半年で半値以下の水準まで下がった。
一方、NY金先物も、昨年7月の1340ドルから年末にかけて1100ドル台へ下げ、今年年初に一旦1300ドルを回復したものの、再度下落に転じ、先週の中国経済減速のニュースを受け、1100ドルを割る水準まで急落した。
この金価格の急落、そして年初の銅価格の下落の要因として、共に中国のヘッジファンドの存在が指摘されている。
大手ヘッジファンド「敦和投資」の名前などが取りざたされているが、中国のファンドは秘密主義が極端で、確かな情報は無い。ただ、彼らが金や銅、その他の商品を売るのは、上海株式市場の動向に関係している、と言われている。
上海株式市場の変調は今年に入ってから鮮明に出ているが、中国政府は、株式市場の下落を止めるのに躍起になっている。
そしてあろうことか、無暗に売りを仕掛けた投資家をインサイダー疑惑で取り締まろうとさえしているのだ。
こうなると、中国国内のファンドは、上海市場が下落することがわかっていても、迂闊に売ることができない。
そこで、彼らは、中国経済の減速にリンクする銅、あるいは金の空売りで、上海株式市場の下落をヘッジしようとするのだ。
しかし、日本のファンドマネージャーの間では、中国政府と中国ヘッジファンドの連携プレーを疑う声もある。というのは、先々週の金曜(17日)、中国人民銀行は突然、金保有高を公開した(6年ぶりに突然)。この金保有高は従来の市場予想の半分ほどのものであり、金価格は1130ドルから1080ドルへ、大きく下落した。
その後一旦、金価格は1100ドル程度でもみ合いとなるが、23日、中国PMIの発表は再度市場の期待を裏切り、金価格はまたしても一旦、1080ドルを割る価格まで下がる。
この不透明な動きによって、
「中国当局は、上海株式市場を崩壊させないために、中国国内ファンドに対して金や銅などの空売りで益出しの機会を与えているのでは?」
という「邪推」が出るのも無理はないだろう。
■ WTI45ドル、NY金先物1000ドルを節目で狙う資源株
以上のように、価格情勢が不確実なことが多い原油、金だが、こうなると、実需よりもテクニカル的な分析に頼るしかないだろう。
その場合、節目とされるのが、WTIで45ドル、NY金先物で1000ドル、という水準だ。ここを割ってくるようだと、一時的にパニック的な売りがきて、そこがセリングクライマックスになる可能性がある。
もっとも、商品先物などは、投資対象としてすぐに出来ない読者をいるだろう。
そこで、あくまで株式市場でのねらい目として、二つの銘柄を挙げておきたい。
一つは住友金属鉱山(5713)だ。
古い投資家なら、「別子」という愛称でこの銘柄を呼ぶ人も多いが、昔から金価格と連動する銘柄として知られてきた。
もっとも、近時では金よりもニッケル価格の動向の方が、より同社の業績を左右する。金価格の下落が大きくなれば、そこで「別子」が売られ、すぐにそれが行きすぎだとする買戻しや押し目買いが入る、という展開が繰り返されやすい。
もう一つは国際石油開発帝石(1605)。
政府も株を保有する、国内原油生産最大手企業だ。原油価格が、前回の安値をまだ割っていないにも関わらず、株価は前回安値の1295円を割り、1294.5円を一旦つけた。
原油価格が下落すれば、まだ下落余地はあるが、その分、反発も大きい可能性がある。
JST特別アドバイザー 堀