【堀 篤コラム】東京市場は、一旦ボックス圏に移行か
公開期間:09月05日08:55〜09月05日08:30株式市場は、ここ数年にわたる世界の経済状況に、これまでの理論がまだ有効であるかどうか、という点に不安を持ち始めている。
このことは、十分に株式市場の大幅下落にもつながるし、逆に大幅上昇にもつながる。しかし、今回のFRBの「古典的な」政策を市場が認めなければ、NY株式市場は荒れるだろう。そうなったときの東京市場の動きは未知数ではあるが、目先は27000円ラインの攻防になりそうだ。国内では円安メリットがある銘柄の押し目に投資は徹するべきだろう。リバウンドはあっても、しばらくは中期的な値上がりを許容する雰囲気にはない。当面は、26500円〜28500円のボックス圏の動きへ移行しそうだ。もし雰囲気が一変するとすれば、中国経済の底入れと国内企業の業績への楽観だろう。しかし、それは11月頃になるのではないだろうか。
このコラムで経済理論を語るのは場違いな気はするが、簡単に言えば、今のFRBの対インフレ政策とその背景にある理論が本当に米国経済を軟着陸させられるかどうかに、市場は疑念を持っている。米国経済はここしばらくの楽観論を失い、一気に悲観的なムードに転換しかねない状況となった。そもそも、いくら金融緩和を続けてもインフレ率2%が実現できなかった古典的手法が、今度は別の要因によってインフレが始まったからと言って、同じく古典的理手法でインフレを封じ込めることが出来るという「思い込み」には不安しか持ちえない。
株式市場関係者にとっては、先週の雇用統計や賃金統計は、若干強い数値ではあったが、これが金融引き締めによって適度に抑えられるかといえば、そういう気がしない、というのが本音だろう。おそらく、金融引き締めは、雇用や賃金をあっという間に適正水準以下まで押し下げ、一方で、インフレは収まらない、という最悪のシナリオが、市場関係者の頭にはある。なぜなら、今回の雇用や賃金の強さは、長く続いた経済活動抑制に対する反動に過ぎず、真の需要増加では無いように思われるからだ。一定程度の活動水準に達すれば、自然に需要は落ち着くという見方は正しいように思える。
また、先週のコラムで書いたように、利上げの背景にバイデン政権の需要政策があると考えると、またしても米国株式は、上がることが許されない「王手飛車取り」の状況にあることになる。バイデン政権が有効な政策を打てば政権は安定するが、金利はその分上がり続けるからだ。逆にバイデン政権が有効な政策を打てなければ、共和党、そしてトランプ氏の影響力が増すと考えられ、米国は再び混とんの中に進むことになりかねない。
どちらにしても、株式市場には新たなシナリオが必要になり、その構築には時間がかかることになる。
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