スイスフランショックで混乱の週
公開期間:01月19日12:00〜11月30日00:00先週は、スイスフランが対ユーロでの上限を撤廃する、というサプライズによって、為替市場・株式市場は大混乱に陥った。
今週はさらに予測が成り立たない、「一寸先は闇」の状況が続くだろう。
ただでさえ、今、ユーロは大ピンチに陥っている。ギリシャ問題に端を発した債務危機が、ユーロ圏の国家をすべて巻き込んでいく、という恐怖感を、なんとか振り払おうと、努力しているところなのだ。
こんな状況の中、これまで、スイス国立銀行は、非常に信用がある中央銀行だった。
スイスフランは、「対ユーロで上限を設けていた」わけだが、これを簡単に言えば、
「ユーロが急落する局面で、スイス国立銀行は、ユーロを買い支え、スイスフランを売る、という、介入を徹底してきた」
ということだ。
このユーロ買いが、欧州の金融市場が、それでも安定していた一つの大きな要因と言ってよい。 そして、つい先々週、スイス国立銀行は自ら、この「ペッグ」=ユーロとスイスフランへの介入による調整が、政策の根源だ、と発言していたところなのだ。
しかし、にも関わらず・・・!
スイス国立銀行は、先週突如として、この介入を止める(=ペッグ制を放棄、スイスフランの上限を撤廃)ことを発表したのだ。
当然、市場は大混乱となり、スイスフランは30%も上昇し、株式市場は急落した。
■スイスフランショックがショックである理由
ではなぜ、スイス国立銀行は、そのような「暴挙」に出たのか。
評論家の中には、事前にわざわざ嘘を言っておいて、実行した今回の施策に批判的な人もいる。
「中央銀行の信頼を失った」
と言うのだが、中央銀行が本当にその金融政策の効果を求めるなら、政策はサプライズを伴わないと意味がない場合もある。
だから、中央銀行総裁を、私は
「嘘つきライセンスを持つ男」
と呼んでいる。
(FRBの議長が女性になってしまったので、男ではないな〜)
スイス国立銀行が、このような政策に出た背景は、
「もうこれ以上介入やってられるか。だって今週はユーロが暴落しそうじゃん!」
ということなのではないか、というのが、市場が大混乱に陥った本当の原因だ。
ということは、つまり、今週ユーロが暴落するようなことが起こる、ということになる。 そこで今週の予定をひも解いてみる。
1月22日 ECB理事会
1月25日 ギリシャ総選挙
この二つが、その候補だろう。
22日のECB理事会では、ユーロ圏の金融緩和策の発表が取りざたされている。また、ギリシャ総選挙でも、対ユーロに対して批判的な勢力が優勢?と伝えられる。
市場の噂では、この二つのどちらかに、相応のリスクがある、という情報が、ECBとスイス当局の間で情報交換されたのではないか、と言われる。
この不透明感こそが、市場混乱の大きな要因でもある。
■東京市場と円の動きは?
では、このスイスフランの上限撤廃=ユーロ暴落?は、東京市場にどのような影響を与えるのか。
結論から言えば、円高と株安だ。
昨年、世界の為替市場の中で、円とスイスフランは、「リスクオフの通貨」として名をはせた。
つまり、株式市場が急落する、中国経済がシュリンクする、欧州危機、ロシア問題・・・あらゆる問題が起きたときに、投資家はドルを売り、円とスイスフランを買ってきた。
なぜならこの二つの国は、テロや戦争と遠い国だからだ。
つまり、円とスイスフランは、ほぼ同一の扱いをされてきたという面がある。
いわばセットなのだ。
もしスイスフランが急騰すれば、円もまた急騰する可能性がある。今後、スイスフランの、「市場での立場」が変わる可能性もあるが、少なくとも今の時点では、ユーロが下落した場合、スイスフランが急騰し、それにつれてセットの円もまた上昇する、という展開が十分に考えられる。
あるいは今後、「リスクオフ」が起きた場合、スイスフランの上昇率が高まり、それにつれて円も変動率が高まる、という可能性、あるいは、スイスフランへの買いが細り、円に集中し、やはり円高の振れ幅が大きくなる、というケースも考えられるだろう。
長くなったが、こんなわけで、今週は週末のギリシャ選挙まで動かないほうが身のためだ。
様々なリスクを抱える今週は、面白くもあり、怖くもある。
早くも、今年の相場は最初の山場を迎えている。
博打的に、大儲け狙いなら良いが、それ以外は、静観すべきだろう。
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